ランチェスターの法則とは何か、どのように学ぶべきか、実践するとどうなるのか。ランチェスター戦略コンサルタントが解りやすく解説します。

このブログは当社代表の福永が、コンサルティング活動をするなかで、感じたこと、考えたこと、学んだことを書いていきます。お手伝いしている企業の成果を上げていくためのコンサルタントの頭の中身、いわば「ネタ帳」です。結果として、ランチェスター戦略理論と、その実効性を強化することになります。お役に立てば幸いです。


価値のピラミッド

  2016年07月02日


差別化とは、顧客の支持を得るために、よりよい価値を提供することである。かみくだこう。
「支持を得る」とは満足してもらうこと。
「よりよい」とは他にはない独自の、他よりも優位なこと。「価値」とは顧客の喜びである。
つまり、独自の、または優位性ある喜びを提供し、顧客の満足を得ることが差別化である。

では、満足を得るための価値とは、どのように構成されるのか。

満足のピラミッド1―本質サービスと表層サービス―

首都大学東京教授でランチェスター戦略学会の小泉徹先生のご講話(ランチェスター協会の戦略研究会、16年5月20日)のなかで、「満足のピラミッド」という概念をお聴きした。
嶋口充輝先生(慶応大学名誉教授、日本マーケティング協会理事長)の「顧客満足型マーケティングの構図(有斐閣、1994年)」で提唱されている概念である。

サービスは「本質サービス」と「表層サービス」に区分される。
本質サービスは顧客が支払う対価に対して当然受け取ると期待しているサービスであり、ピラミッドの土台を構成する。
何かが欠けると、他のすべてがよかったとしても、成り立たなくなる。
「表層サービス」は、対価に対して当然とは思わないが、あればあるにこしたことはない期待サービスで、ピラミッドの上部を構成する。何か一つが卓越していれば、他の表層サービスが悪くとも、その一つの卓越性で満足のピラミッドが高まる。

満足のピラミッド2―ロジカル要素とエモーショナル要素―

もう一つ、フランク・ベセニャックという人も「顧客満足のピラミッド」という概念を提唱している。
顧客満足のピラミッドの下部にはロジカル(論理的・機能的)な要素があり、上部にはエモーショナル(情緒的・感情的)な要素があるという。
ロジカルな要素は必要不可欠だが、大きな差がつかず、決定的な満足は得られない。
ロジカルな要素の上に、顧客を認知し、配慮し、楽しませ、特別感を提供するエモーショナルな要素があって、決定的な満足が得られるとする考えである。

価値のピラミッド―基本価値と付加価値―

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これら二つの満足のピラミッド理論を、私(福永)なりにかみくだき、実務的に使いやすいように応用した考えが「価値のピラミッド」である。
下部には「基本価値」を置く。商品・サービスの基本的な価値である。
自動車なら安全に走行する、ホテルなら安眠できるといったことで、これが無ければ成り立たない。
同業や、同カテゴリー商品・サービスであれば、当たり前の価値である。
上部には「付加価値」を置く。ここでいう付加価値とは、経済学や会計用語のそれではなく、商品・サービスの「付帯的・補助的」な価値である。
付加価値は大きく二つに分かれる。一つが「機能的付加価値」である。
独自の、優位性のある物理的・機能的な価値のこと。
自動車なら高スピードや低燃費といったこと。
ホテルなら大浴場や充実した朝食メニューといったことである。
もう一つは「情緒的付加価値」である。独自の、優位性ある感覚的・情緒的な価値のこと。
自動車ならスタイリッシュ、プレステージといったイメージ。ホテルならホスピタリティや館内外の雰囲気といったこと。
基本価値は、顧客が支払う対価に対して当然受け取ると期待していること。
これが欠如すると、どんなに付加価値が高くても成り立たない。
付加価値は、あればあるにこしたことのないこと。無くても不満を感じないが、あれば満足を感じること。
基本価値の欠如は不満に、付加価値の充実は満足につながる。
基本価値での差はつけにくい。
付加価値での差はつけやすい。

価値のピラミッドを拡大させる三つの方向

価値は基本価値の土台の上に、機能的付加価値、情緒的付加価値が存在し、三要素で構成されている。
ということは、価値を拡大させるということは三方向あるということだ。 機能的付加価値は、それに取り組めば即効性のある差をつけやすいが、同時にミート(同質化)されやすい。
低燃費という自動車の機能的付加価値は多くの自動車の機能となった。
大浴場つきのホテルも増えた。基本価値になりつつある。
常に次の打ち手を繰り出していく必要がある。

情緒的付加価値は、顧客の頭の中での自社と自社商品・サービスのイメージである。つまり、ブランディングである。
知恵も時間も要するが、培ったイメージは主観的なものなので、差はつけやすい。ホテルの格式や雰囲気などは典型だろう。
ただし、安心していてはいけない。
イメージを守っているだけでは価値は陳腐化するし、不祥事はもちろん、基本価値が損なわれると、長年培ってきたイメージも瞬時に崩壊する。
基本価値は、他社もやっていることなので差をつけにくい。
だからといって手は抜いてはならない。
凡事徹底(凡事を非凡に徹底)することで「当たり前品質」の向上を図るべきだ。一日1ミリずつピラミッドの土台を拡げていくと考えよう。
千日(約三年)で1メートルも、わが社の価値のピラミッドは拡大する。
時間はかかるし、進化の手ごたえも感じにくいが、「当たり前のレベルが違う」絶対的・圧倒的な差をつけることができる。