ランチェスターの法則とは何か、どのように学ぶべきか、実践するとどうなるのか。ランチェスター戦略コンサルタントが解りやすく解説します。

このブログは当社代表の福永が、コンサルティング活動をするなかで、感じたこと、考えたこと、学んだことを書いていきます。お手伝いしている企業の成果を上げていくためのコンサルタントの頭の中身、いわば「ネタ帳」です。結果として、ランチェスター戦略理論と、その実効性を強化することになります。お役に立てば幸いです。


事例研究 H.I.S.のランチェスター戦略

  2016年07月18日


「澤田経営道場」で、ランチェスター協会を通じて、講師をしている。
同道場はH.I.S.(独立ベンチャー系旅行会社で、海外旅行の取り扱い人数ではJTBを上回る1位企業。近年ではハウステンボスの再建でも話題となった)の創業者の澤田秀雄会長(ランチェスター協会顧問)が設立した。世界で戦える次世代の経営者を養成する目的で、2015年に立ちあげた教育機関である。
二年間もの間、仕事を離れて研修に専念するものである。
現在、三期生を一般公募中なので、ご興味あれば、お問い合わせいただきたい。

http://sawadadojo.com/

社員のベクトルを合わせ、共通言語をもたせる研修

澤田道場で、私(福永)は、一回6時間(正味4時間半)研修を6回実施している。
ランチェスター戦略の理論と実務体系を、講話・ケース演習・実習で習得してもらっている。
澤田会長は創業の頃からランチェスター戦略を学ばれ、自社の戦略に活かしてきたので、次世代にも学んでもらいたいとの意向で、取り入れられた。
内容は、私が責任者を務めるランチェスター協会の「専門研究コース」とほぼ同等である。下記をご参考まで。

http://urx.blue/xchs

ランチェスター戦略専門研究コースでは、最終講座で、受講者に成果発表をしていただいている。
学んだことは即、実行する精神である。
7名いる澤田経営道場二期生には、全員で分担して「H.I.S.のランチェスター戦略」と題して、同社の創業期から現在に到るまでをランチェスター戦略の理論に照らし合わせて分析し、未来までを展望してもらった。

澤田秀雄会長は著名な起業家で著書もあるので、社員はわが社の戦略をある程度、理解している。
だが、一般に、多くの会社の社員は意外にわが社のことを知らない。
わが社の成り立ちから今日までを理解することは、社員のベクトルを合わせる意味がある。
特に、創業の精神(どのような使命感で事業を始めたか)は競争力の源泉となる。
共有化しなければならない。
そのうえで、「共通言語」で未来の戦略を語り合う風土をつくることが大切だ。
ランチェスター戦略研修は、その意味でも有効だ。

さて、澤田経営道場二期生のランチェスター戦略専門研究コースは修了し、その成果は同協会の第224回戦略研究会にて報告された。以下は、その要約である。
ランチェスター戦略の実践事例として、紹介する。

創業期のH.I.S.~バックパッカーがつくった会社~

澤田氏が海外航空券の販売事業を立ち上げたのは1981年。1ドル230円前後の頃です。
裕福でなければ海外旅行に行けない時代です。
年間の海外渡航者数は現在の四分の一以下の400万人 程度でした。
添乗員つきの団体旅行が主流です。

起業するまでドイツに留学し、バックパッカー(低予算で個人旅行する人)として世界を旅した澤田氏。
パキスタン航空などの、有名ではない航空会社、乗り継ぎ便、閑散期といった不人気な航空券に絞って、大量に仕入れます。
航空券の内外価格差と繁閑差に着目し、お金はないが時間はある学生に、格安の海外航空券を販売します。

やがて、顧客であったバックパッカーが社員になっていき、インドや中国などの自由旅行を、旅慣れた社員が説明会を通じて販売していきます。
「差別化×集中×接近戦」のランチェスター弱者の戦略の典型で、H.I.S.は航空券販売事業者として確固たる地位を確立します。

 成長期のH.I.S.~各個撃破で1位獲得~

89年にはパッケージツアーの販売を開始。
ですが、いきなりフルラインの品ぞろえをしたわけではありません。
顧客層を絞り、取り扱う航空会社を絞り、旅行先を絞ります。
大手が注力しているハワイやグァムは後まわし。バリ島、セブ島、プーケット島など、当時は有名ではなかったビーチリゾートに、他社よりも相当安く行けるツアーを若者に販売していくことで、旅行会社化していきます。
また、H.I.S.では社員によるチラシの手配りに力を入れてきました。

バブルも弾けて、海外旅行者数も横ばいとなった98年頃から、JTBなどの大手も格安旅行に参入してきます(強者のミート戦略)が、航空会社と旅行方面の各個撃破と、チラシの手配り(弱者の差別化×集中×接近戦)により、2005年、海外旅行取扱数でJTBを抜いて1位になります。

1位になったのは海外の件数ベースです。
金額では2位です。国内旅行や訪日旅行は後まわしにしてきました。
2006年前後からは、団体旅行、富裕層向け、国内旅行、訪日旅行と、品揃えを拡充していき、旅行業者として総合化を図ってきています。
また、ホテル、航空・運輸、テーマパークと多角化していきます。
2010年以降のハウステンボスの劇的な再建は有名です。

 未来のH.I.S.~業界の構造変化に対応し、未来をつくる~

海外渡航者数が頭打ちするなか、総合化と多角化によりH.I.S.は成長を続け、年商5,000億円を超える企業グループに成長しました。

ただし、いま、旅行業は構造変化が進んでいます。
ネットで格安のツアーを販売する事業者、民泊(ホテル・旅館ではない一般民家に宿泊させる)事業者たちです。
これらの変化にいかに対応していくのか。
H.I.S.はいま、ハウステンボスで、ロボット事業、エネルギー事業、新たな農業などを実験しながら事業化に取組んでいます。

旅行の進化・深化とともに、持続可能な世界を目指す「未来創造型企業」となることがH.I.S.の未来です。
澤田経営道場生は、その先駆けとなる存在なのです。