ランチェスター法則とは。ランチェスター戦略コンサルタントが解説。

10分でわかる! 競争戦略のバイブル「ランチェスター戦略」

第3章 ランチェスター戦略 三つの結論

 

1.勝ちやすきに勝つ~「足下(そっか)の敵」攻撃の原則〜

成熟市場において売上・利益・シェアを上げるには同業他社から顧客を奪うしかありません。
「どのライバルからでも、同業者はすべて敵なので、すべてから奪う」と考えては、確率戦となり体力が消耗するわりに得るものが少なくなります。
敵を定めて狙い撃ちすべきです。では、どの敵から奪うか。
答えは、足下の敵です。
足下とは1ランク下です。
自社が1位であれば2位、2位であれば3位です。
「足下の敵」攻撃の原則といい、ランチェスター戦略三つの結論の一つです。
 
・トヨタ、日産、ホンダのケース

自社よりも上を狙うのは危険です。第2章の8で2位はジリ貧と言いました。
かつての日産が衰退したのはトヨタに張り合い過ぎたことが最大の原因です。
張り合うとは同質化競争(ミート戦略)です。
武器効率が1になれば、兵力数で優る上位企業が有利です。

ランチェスター戦略では2位は弱者と定義していますが、一般に2位の企業は自社を弱者とは思っていません。
強者だと意識しているものです。
特に日産は名門企業でしたから、その意識は強いものでした。
しかし、弱者、強者は市場シェアの問題であって規模や歴史や格式は関係ありません。

裏を返せば、下位企業と同質化競争をすれば有利に戦えます。日産はホンダにミートすればよかったのです。

・大正、第一三共、武田のケース

市販の風邪薬市場のケースです。
05年、3位9.3%の武田薬品ベンザは「あなたの風邪に狙いを決めて」をキャッチコピーに発熱、のど、鼻の症状別に3種類の風邪薬を市場投入しました。
差別化戦略です。

これに対し2位13.3%の第一三共ルルは、長年使い続けたキャッチコピー「くしゃみ3回、ルル3錠」を「熱、のど、鼻にルルが効く」に変えました。
ベンザでは風邪薬代が3倍かかり、ルルなら一つで全部に効きます、という意味のコピーです。
弱者の差別化を無効にする、これもミート戦略です。

結果、06年、第一三共は14.4%にアップし、武田は9.5%と微増にとどまりました。
ちなみにダントツ1位の大正製薬は33%から29.5%にダウンしました。
3位の仕掛けに2位が封じ込め作戦で対抗し、1位が我関せずと動かなかった結果です。

自社よりも下位を叩くなら足下より、さらに下位のほうが叩きやすいですが、その間に足下が浮上してこないとは限りません。
射程距離が大切ですので、優先すべきは足下です。

ただし、いかなる場合も足下を叩けばよいということではありません。
伸び率、企業規模などを踏まえて応用してください。
大切なことは敵を絞ることです。
一方、頭上の敵に対しては、その動きを把握し差別化しなければなりません。

2.日本で2番目に高い山を知っていますか?~ナンバーワン主義~

日本で1番高い山が富士山であることを知らない人はいません。
では、2番目に高い山をあなたはご存知でしょうか? 
答えは南アルプスの北岳ですが、十人に一人も知りません。ご当地の山梨・長野にゆかりがあるか、山が好きな人に限られます。

1番と2番とでは埋めがたい大きな差があります。
ビジネスも同じです。
1番でなければなりません。
1番だけを強者といい、2番以下は弱者と呼ぶゆえんです。

ただし、1位といえども2位以下との差が少ない2強、3強、分散型という射程圏内にライバルがいる状況だと、不安定な1位です。
下位企業もなんとか逆転したいと挑戦し、激しい消耗戦が繰り広げられ、お互いに収益性が高まりません。

2位以下を射程圏外に引き離すダントツになったら、どうでしょうか。
2位以下はダントツと張り合っていたら体力的にもちません。
全面対決を避け、住み分けを意識します。戦いは終結に向かい、地位は安定し収益性は格段によくなります。

2位以下を射程圏外に引き離すダントツのことを、ランチェスター戦略では単なる1位と分けてナンバーワンと定義しています。
射程距離はルート3倍(約1.7倍)を標準とします。
2社間競合や客内の単品シェアのような局地戦の場合は3倍を適用します。

営業目標にゴールを設定するならば、それはナンバーワンのシェアです。

福永コメント

ナンバーワンと41.7%、1位と26.1%はおよそ相関しています。
1位が41.7%を超えると、7割以上の確率で2位をルート3倍以上引き離したナンバーワンとなります。
2位の8割は26.1%未満です。
つまり、41.7%≒ナンバーワン、26.1%≒1位です。これは統計結果です。確認したい方は下記拙著をご覧ください。

世界一わかりやすいランチェスター戦略の授業 126ページ~127ページ

3.弱者がナンバーワンになる方法 〜一点集中主義〜

いかにしてナンバーワンになるか。既に1位の強者は「足下の敵」攻撃の原則で2位を叩きます。
たとえば自社が1位でシェア30%、2位が25%だとすると、その差は5%です。
2位からシェア5%を奪い取れば、自社は35%にアップし、二位は20%にダウンします。
その差15%となり、ルート3倍の射程圏外です。ナンバーワンとなります。

では弱者はどうすればよいのか。
ナンバーワンなんて、弱者には夢のまた夢、と思うかもしれません。
確かに全体で勝つのは至難の技。一部分で勝つことを考えます。

特定の地域、販売経路、客層、顧客、そして商品。領域を細分化すれば既に1位の分野があるかもしれません。
1 位ではないが逆転可能な射程圏内に入っている分野なら、探せばきっとあるはず。
そこを狙うのが弱者のナンバーワンづくりです。
一点集中主義といいます。集中すべき分野を決め、どのライバルよりも量的経営資源を投入します。

ナンバーワン主義、「足下の敵」攻撃の原則、一点集中主義をランチェスター戦略三つの結論と呼びます。

福永コメント

規模は小さくても特定市場でナンバーワンのシェアをもつ会社「小さなナンバーワン企業」は同業者に比べておよそ三倍の収益性があることを統計調査でわかりました。 下記の拙著でご確認ください。
ランチェスター戦略「小さなNo.1」企業 46ページ~53ページ

以上がランチェスター戦略の基本理論です。
では、これを企業はどのように導入し、成果を上げていくのか。
第4章で、ランチェスター戦略の実務体系を解説します。



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